磁性を活かした異物検査で安全が守られている

身の回りにあるものの中に、もし異物が混入してしまっていたとしたら、どうなるでしょうか。誤飲や事故など、思わぬ事態に発展してしまうこともあります。異物混入は、安全な生活を送る為に避けておかなければならないことです。

異物検査の中には種類がありますが、ここでは磁性を活かした金属検査機について説明していきます。

私たちの生活がどのようにして守られているのか、わかるのではないでしょうか。

液体の異物検査はどのように行われるのか

異物検査とは、その名の通り、対象物の中に異物が混入してしまっていないか調べる検査のことを指します。工場で加工される食品や日用品など多くのものが、この異物検査を行っています。この検査をすることによって、消費者である私たちの手元には安全な商品が届くようになっているのです。

ここで使われている異物検査機では、人の目ではパッと判別できないような細かい小さなものや、対象物の中に入り込んでしまっているようなものでも発見することができます。異物の混入が発見された場合は、この検査機と連動させている選別機によって、排除して不良品が混ざらないようにしていきます。

食品の異物検査とは?どんな検査方法がある?

異物検査機には、いくつか種類があります。どれも基本的には非接触、非破壊での検査が可能で、対象物自体に影響を及ぼさないように作られています。その代表格とも言える金属検査機では、鉄やステンレスなど、様々な種類の金属に反応することができます。

X線検査機が苦手としている薄い箔状の金属や、粉状になってしまっているような金属、また、金属成分を含んでいる印刷インクなどにも反応し、不良品として検出することができます。もう一つ、よく知られている検査機には、X線を用いて対象物を透かして見ることで、異物を検出することができるX線検査機があります。

金属などの他、ガラスや硬質ゴム、プラスチックなど、幅広い種類の異物に対して反応し、発見することができます。また、同時に個数や割れや欠けがないかなどの検査もすることができます。空港の手荷物検査でもX線検査が用いられている為、最もイメージしやすい異物検査機ではないでしょうか。

その他には、包装のかみこみが検出できる検査機や、特殊素材に特化した異物検査機などがあります。かみこみ検査機では、対象物の包装が、きちっと密閉できているかを検査します。包装を圧着する部分に異物が入ると、きれいに密閉することができません。

密閉がしっかりできていないと、中の商品の保存性が守られず、安全性にも支障をきたしてしまう為、これも大切な検査と言えます。特殊素材に特化した異物検査機では、特殊素材を製造する際に、気泡や異物が混入していないかどうか判別することができます。

このように、あらゆるものに対して異物を検出する仕組みが作られ、私たちの安全が守られているのです。

磁性とは、物質が持っている磁気的特性のことを指します。原子を構成している電子や、原子核の磁気モーメントによって、この特性が生まれています。磁気的特性を持つ物質の中でも特に、自身が磁石となるくらいの強い特性を持っているものは、強磁性体と呼ばれています。

反対に、強磁性ではない物質、つまり非磁性の物質の内、磁石を近づけた時に、磁力の方向と平行な磁化を生じる性質のことを常磁性、反対方向に磁化する性質のことを反磁性と言います。すなわち、この磁性の持つ特徴を活かして作られた検査機が、金属検査機なのです。

金属検査機では、磁力線の変化に注目して異物を発見する仕組みになっています。磁力線とは、磁石の正極から負極へ向かう曲線のことを言います。子供の頃、紙の上に砂鉄を撒き、下から磁石を近づけるとパッと曲線を描かれる様子を楽しんだ記憶を思い返す人もいるのではないでしょうか。

そこで描かれる曲線の各点での接線方向が、磁界の方向となっているのです。

検査機の中を通過する際に、対象物の中に金属片などの異物が混入していた場合、磁界がその影響を受けて変化していきます。金属検査機では、その変化を察知して異物を検出する仕組みになっています。金属検査機では、一般的に、コイルを用いる方法が取られています。

発信コイルと、受信コイルを離した位置に設置することで、その間には磁界が一定量で発生します。通常では、この一定に発生している磁界が乱れることはありませんが、金属片など、磁性を持つ異物が混入している対象物が通過する場合は、この磁界が乱れてしまいます。

発信コイルから出た磁界の量と、受信コイル側で受け取る磁界の量には差が出てくる訳です。この差を信号として受け取ることにより、その対象物は不良品であると判別することができるような仕組みになっています。

金属と言っても、その種類によって検査しやすいものと検査しにくいものがあります。鉄は磁性体である為検出しやすくく、ステンレスや銅は非磁性体の為検出しにくくなっています。しかしながら、混入する金属異物は鉄だけとは限らない為、それ以外の金属でも検出できるように、高感度な性能を持つ検査機が開発されていっています。

その他にも、対象物の状態によっても検査のしやすさは変わってきます。それは、金属検査機が発生させている磁界に、影響を及ぼしてしまうものもあるからです。乾燥した対象物では、まず検査に大きな影響は見られません。

しかしながら、高い水分を含んでいるものだったり、塩分濃度が高いものであったり、また、包装材に金属成分が含まれているものなどは注意が必要です。

磁界に影響を及ぼしてしまう為、検査の精度が悪くなってしまいます。これらが磁界に与える影響によって、本来検出すべきである異物に対する反応が、紛れ込んでしまうからです。その為、金属検査機には、これらの問題をクリアし、より高い精度で検査できるような工夫が求められています。

対象物自体が検査に与える影響をできるだけ少なくする為には、対象物をまとめずに個包装のまま検査したり、対象物の偏りを少なくしたりすることが必要になってきます。また、対象物の温度が高くなればなるほど、対象物が磁界に与える影響が大きくなってしまうという特徴があります。

これは、温度が高いと渦電流が流れやすくなってしまうからです。その為、できるだけ温度を低く保ったり、温度変化が起こらないように空調管理をしっかりと行うことで、より正確な検査をすることができるようになります。

参考元→食品異物検査 - QSAI