食品の異物検査とは?どんな検査方法がある?

近年、食品への異物混入が消費者の大きな関心事になっています。

実際に混入していた異物によって健康被害が起こる、という事件は多くありませんが、マスコミで異物混入事件が大きく取り上げられたことで消費者の目が厳しくなっているのです。

では、具体的に異物混入とは何なのか、異物検査とはどのようなことを行うのか見てみましょう。

磁性を活かした異物検査で安全が守られている

製品の中に本来混じっていてはいけないものが混じっている、という状態が異物混入です。どのような製品でも起こり得ますが、特に重視されるのが食べ物の異物混入でしょう。直接口に入れるものだけに、消費者の関心も高く問題になりやすいと言えます。

また、近年はSNSで情報が拡散するケースが多く、また拡散するスピードも速くなっているので、異物混入の可能性が発生すれば企業はその対応に迫られることになります。実際に健康被害が発生してしまえば大問題になりますし、そこまでいかずとも異物混入があったと分かれば大きなイメージダウンになってしまうからです。

では、具体的にどのような異物が食品に混ざり込む可能性があるのでしょうか。食品の中の異物は、生産、貯蔵、流通、販売の過程のどこかで不適切な取り扱いを行うことで生じ、「動物性異物」「植物性異物」「鉱物性異物」の3種類に分類されます。

動物性異物は虫やその卵や幼虫、人毛や寄生虫といったものが相当します。特に虫の幼虫が混入することが多く、その鋭い歯はアルミ箔やポリエチレンなど食品を包んでいる素材を簡単に食い破ることが分かっています。植物性異物はわらやもみ殻、ゴム片やカビなど。

鉱物性異物は小石や貝殻片、ガラスやプラスチックなどの破片が該当します。

異物検査とは、読んで字の如く食品に混入していた異物が何なのかを探るための検査です。混ざっている異物の正体が分かれば、それがどの過程で混入してしまったのかを調査することができ、再発防止に繋げることができます。

また、検査の結果異物混入ではなかったことが分かるケースもあります。しかし、食品を生産している企業が自ら検査を行うと、その正確さが疑問視されてしまいます。自社に有利な検査結果を出したのではないかと疑われてしまうからです。

消費者に対して正確公平な検査であることを示すためには、第三者に検査してもらうのが適切です。いろいろな分析センターや研究所が、企業や消費者からの依頼を受けて検査に勤しんでいるのです。

異物が検査機関に到着すると、まず外観検査が行われることになります。外観検査は異物の状態を写真で記録し、大きさや色、硬さといった見た目の特徴や性質から異物の正体を見極める検査です。検査は目視、あるいは実体顕微鏡や光学顕微鏡を用いて行われます。

プラスチック系、鉱物系以外の異物であれば、この外観検査でおおよその判定を行うことが可能です。例えば、光学顕微鏡で検査を行った結果、細胞壁や導管などが確認できれば、その異物は植物片であることが分かります。

繊維状の異物はよく報告が上る異物ですが、これも外観をよく確認することである程度判別することが可能な場合があります。

見た目が単なる糸くずであっても、綿と麻では構造が異なるため、見分けることができるのです。また天然繊維以外の、例えばレーヨンのような化学繊維の場合表面が平滑という特徴を持っているため、こちらも見分けることが可能です。

完全な判定が行えずとも、ここでの検査である程度の予測を立て、検査の方向性を決定することになります。また、異物の外観だけではなく、どこに異物が混ざり込んでいたかというのも重要な判断材料になります。

金属系やプラスチック系の異物は、外観検査だけでははっきりとその正体を判定することができません。そこで行われるのが機器分析です。フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)や蛍光X線分析装置(EDX)などの機器を用いて調査を行います。

FT-IRは調査する異物に赤外線を照射し、その物質がどれくらい赤外線を吸収するかを測定することによって、その構成成分の特定を行います。有機化合物かどうかを判断するのに最適な方法であり、異物検査を行う上では必須と言ってもよいほどよく行われています。

EDXは、検査異物にX線を照射し、そのときに発生する蛍光X線を検出して元素の判定を行う、という検査機器です。物質に一定のX線を照射して発生する蛍光X線は元素によって固定なので、この検査によって異物に含まれている元素の種類や含有量を調べ、正体が何なのか判断するのです。

検査する物質を破壊することなく元素分析ができ、FT-IRでは測定が難しい金属などを特定する場合に用いられます。

異物の正体が動物性であった場合は、その種類を特定する検査を行います。例えば繊維の場合。肉眼では同じように見えても、表面を顕微鏡で観察して鱗模様を確認することができれば、それは動物の毛であることが分かります。

また断面を調べれば動物種を特定することが可能です。毛や皮膚片と言ったタンパク質が多く含まれている異物の場合は、反応検査を行うことで微量でも推定を行うことができます。また、カビの種類を特定するときは。質量分析装置(MALDI-TOFMS)微生物同定システムによって推定を行うことになります。

機器分析では不十分な場合、あるいは機器分析による判定をより正確なものにするために行われるのが呈色反応検査です。定性分析となっていることもあります。

呈色反応は化学反応の一種で、特定の試薬を異物に反応させ、臭いが出る、沈殿が生じる、色が変わるなどの反応を確かめます。例えば、ヨウ素-デンプン反応検査ではデンプンの有無の確認が、キサントプロテイン反応検査ではタンパク質の有無の確認を行うことができます。

重要な呈色反応検査の一つに、カタラーゼ試験があります。これは異物が加熱されているか否かを判断するための検査です。異物が過熱されているか否かというのは、異物がどの過程で混入したかを知る非常に重要な判断材料になります。

カタラーゼは様々な生物の細胞に存在する酵素で、過酸化水素を酸素と水に変える反応を起こします。そして、このカタラーゼは加熱されると働きが失われます。つまり異物に過酸化水素を添加し、泡が発生すれば加熱されていない、逆に発生しなければ加熱されていると判断することができるのです。